手を伸ばさずにはいられなくて

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「何で俺の名前?」 「…あ、のー…えっと、テストで…良い点数を取る為?の願掛けと言うか……」 「ハァ?」 「その教科を、得意…な人の名前を、書くと…ですね、あの、呪術的な」 「…他の教科でもやってんのか?」 「はい‼︎そうです、やってます‼︎あぁー…失敗した‼︎日本史だけ名前書き直し忘れちゃったー」 「無記名で0点」 「……はい」  涙がこぼれ落ちる前に、ここから早くいなくなりたい。  思い切り立ち上がったせいで椅子が床を強く擦る不快な音が響いた。 「待て」  先生の言葉に驚いて勢いよく顔を上げたら、涙が頬を伝っていった。 「…」 「あ、バカお前…何泣いて」 「いえ、泣いてないです。すいません…ごめんなさい、悪いのは私だから…」  濡れた顔を手の甲で乱暴に擦る。 「座れ」 「…」 「すーわーれ」 「…はい」  先生が解答用紙の上に消しゴムを置いた。 「俺の名前、消せ」 「…はい」
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