君がいなくて

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「泣いてる」  涙を流して母親は膝から崩れ落ちた。もちろん父親も。横の彼だって涙を流し居る。  それは彼女が僅かながら瞳を開いていたから。そして彼女は三人の姿を見て疑問を覚えていた。  気軽に話せるようになったのはそれからまた数日後に一般病棟に移ってから。 「怖かった。事故の時のことを思うとまだ震えるよ」  明るい彼女の言葉が飛び交っている。 「私たちはもっと怖かったんだから」 「そうだよ。どんなに心配したことか」  母親がこちらも明るく言い返して、それに彼も同調する。 「はい。おかげで生きております。残念ながら足はなくなっちゃったけどね」  どこまでも彼女は明るく朗らかだ。事故で再生できなかった両足は切断になってしまったのに、それをもう冗談にしているくらい。  だけど、彼女の明るさは周りには伝わらない。その言葉を聞くと一番に返事をしそうな母親は言葉もない。それを父親がかばっていた。 「ちょっと話があるんだ。良かったら二人で」  軽く静かになった病室で彼が、彼女から父親を順に見ると、父親は静かに頷いて、母親を連れて病室を離れてた。
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