理事長という男

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

理事長という男

 肱志第三高校は、あたしが春まで事務主任として勤めていた学校で、学校法人肱志学園が運営している。この法人は、創業家の松永一族が取り仕切り、現三代目理事長をトップとした完全な上意下達の組織である。同族経営とはいえ、創設者の直系である理事長の権力は圧倒的で、実際は理事長の独裁だ。それでも、あたしにとってこんな好都合なことは無い。要するに、この組織を、人を、あたしの思い通りにするには、理事長さえ操ってしまえばいい。  理事長を誑し込むのは、意外と簡単だった。理事長は51歳。大学を出てすぐに肱志学園の要職に就き、一般社会を知らない。俗に言うボンボンだ。いつだったか、理事長の取り巻きからこんなことを聞いた。 「理事長は、自分の気をよくしてくれる人を信用する。で、うまくいけばその人の言うことは100%聞いてくれる。一種の洗脳みたいな?まあ、その分執着も凄いけど」  ならば、あたしという存在に執着させればいい。理事長の脳に入り込んで自在に操作するあたし。そう、何かの寄生虫みたいに。男である理事長を虜にし、意のままにする方法は一つ。あたしは「女」を使って、理事長を手懐けることに成功した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!