スクール プレデター

2人まとめて

　次に片付けたのは、物理の山崎と情報の中尾。２人は職務分掌上、総務課長と総務主任という関係。定年間際の山崎が中尾に引継ぎをする為か、よく２人で行動している。あたしは特に情報の中尾が気に入らない。あたしが乗り込んだ時から、あたしの存在に「ＮＯ」を突き付ける嫌な女。あたしが基本給の引き下げを断行した時、職員会でその説明を校長にやらせようとしたら、「そこに居る給与担当者の西山さんが説明すべきでは？」と突っかかってきた。腹が立つ。あたしは後で教頭を呼び付けて、「なんであたしが中尾なんかに、あんな物言いされんといかんのや！」と怒鳴り散らしてやった。勿論これで気が収まる訳がなかった。邪魔邪魔邪魔邪魔…中尾が邪魔。中尾の存在は、あたしの体中を、虫が這いまわるような感覚に陥らせる。気持ち悪い。どうにかして退治しなければ。

　あたしは、山崎と中尾が不倫関係にあるとでっち上げて、クビにすることを思いついた。肱志学園御用達のネット掲示板に書き込んで、それを証拠に、不貞行為で解雇という流れ。山崎には可哀そうな気もするけど、山崎の存在はあたしに何のメリットもないし、中尾とセットで片付けた方が手っ取り早い。　
　あたしは早速、手駒の職員達と一緒に、「山○と中尾、絶賛不倫中！」「あの二人いつも一緒でヤバい」「不倫教師山○＆中○」といった感じで、次々に書き込んでいった。大分盛り上がったところで、理事長にその書き込みを見せる。いつものことながら、あたしに対しては真偽の確認をしない。理事長は笑いながら、「２人に退職届を出させるように」と一言。
　不倫の噂は、既に２人の反論の余地が無いほどに広まっていた。好奇の目にさらされて身の置き所がなくなったのか、２人ともすんなりと退職届を出してきた。さようなら、山崎＆中尾先生。

　それから暫くして、系列の肱志幼稚園が、バスの運転手として山崎の採用を決めたと聞いた。とんでもない話。系列校でも、あたしがクビにした奴は全て出禁だ。あたしはすぐに理事長に電話して、採用稟議の決裁を取り消すよう伝えた。「不貞行為で解雇したの、お忘れですか？」と。これに対して、肱志幼稚園の採用担当から当然に反発は無かった。「理事長がそうおっしゃるなら」という、いつもながらの隷属っぷり。そう、この組織で唯一必要なのは、その忠誠心だ。