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小さいころは自分で自分のやりたいこととか、好きなモノ、嫌いなモノ、なんでも表現できていた気がする。
いつからだろう、こうなってしまったのは。
こんなことをぼんやりと考えながら、マニュアルを見ている3人に上司らしく命令を出す。
「わかった?このマニュアルを覚えて、自分がどういう風にふるまわなければいけないのかしっかり考えなさい。」
面接者1が口を歪めた。
「何か問題でも?」
面接者1は自分の表情に気が付いたのかさっと直した。
「あーはい。このマニュアル、全部を覚えるんですよね?」
今しがた説明したはずだけど?
「何日で覚えるんですか?」
「そうね、1日でと言いたいところだけどさすがに無理でしょうから2日あげるわ。3日目から試用期間に入るから。」
面接者1はまたまた顔を歪めた。感情が顔にわかりやすく出るタイプね。
面接者2、3にも目を走らせる。
これまで面接者2は表情筋を1ミリも動かしていない。スキゾイド気味か。
面接者3は…あーあー、泣きそうになっちゃってかわいそう。
「とりあえず今日明日は1日中それを覚えるのに時間を使って。あ、後私も席を外すことがあると思うけど、何か質問があれば後でまとめて私に言うこと。他の人には話しかけないこと。いいわね?」
はーい、と気だるそうに答えたのは面接者1のみだった。
前任がアレだったもんな…と嫌な記憶を思い出してしまった。
ダメダメ、今はこの仕事に集中するのよ。
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