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「…やっべ、まじでどうしよ…」 ギルドで素材収集の依頼を受注して、無事達成した俺、レオンは雨が降って視界が死ぬほど悪い中、だだっ広い森を進んでいた。 パーティーは組んではいるが今はソロで、更に運悪く現在完全に遭難中。 帰還途中に雨に降られて視界も更に悪くなった状態の森はヤバいのよ。 「地図濡れて破れてボロッボロだし読めねーし…あーマジどうするよ…」 いや、まあ少なくとも雨が上がればある程度視界は良くなるだろうが…それでもコレ帰れるよな?流石にこんな所で死ぬわけにいかない。 …とか考えてるとちょっと木々の間隔が空いてきたな。 まあ…一旦森からは抜けるか。いつ魔物が周りから襲って来るか気を張ってないといけなかったし…魔力感知装置があるにしても気を抜いてると急襲されたときとか対応できないからな。ソロだとそういうのが辛い。 いや、さっきも言ったけど普段はパーティ組んでるからな?オレ、ボッチジャ、ナイ。 木が途切れて草原に出て、肩の水晶みたいな魔力感知装置の電源を一旦落とす。電池もったいないからな。雨に濡れても問題ない作りにはなってるからそこは大丈夫だが、道中電池切れるとかなると面倒だしなぁ。 で…と外側に目を向けると、同時に完全に大降りの雨の様子。 「うわぁ…コレ抜けるのやだな…ん?家…?」 草原は脛辺りまでの長さの草で、均一に緑色をしてる。その中の遠くにぽつんとレンガ造りの家が見えた。視界が悪いせいで見づらいが、薄っすらと。 こんだけ開けてるならモンスターの急襲とかも心配なさそうだな…とかじゃなくて家?こんな所に?街から十数キロくらい離れたこんな所に誰が?街も村もはこの辺には無いはずだし、そもそもここらへんはほぼ森のど真ん中。まず人が寄り付くことすら無いだろ。 「…いや、空き家か?」 クソ見づらいけどよくよく見てみるとかなりボロい家らしい。あの様子だと空き家っぽいか。 丁度いい、ここにいてもどうせ風邪引くしあそこまで走るか。 足に力を込めて体を低く、全速力で駆け出す。唯一使える身体強化魔法(笑)を足に全力でかけて突っ走る。……足に魔力集めてたらなんかちょっと強くなった感じがするからやってるだけで、魔法陣すら展開してないから多分あんまり意味ないけど。 それはともかく。 思いの外雨が当たって痛いが、気にしなけりゃ大丈夫。相手は水だぞ、こちとら日々狼の爪やら熊の巨体を相手にしてあ痛いわこれ普通に痛いわ。そういや水って硬いんだっけ。 「っぜーっ…はー…」 滝みたいな大雨に打たれること十数秒で到着。慣れない身体強化のせいで息は上がったしめっちゃ濡れたが問題ない。軒みたいな所にベンチがあったからそこに座る。…うーわ雨やべー…あ、井戸あるな。多分この様子だと枯れてそうだけど。 そんな事を考えながらそういや魔物とかいないよな…と思って一旦魔力感知装置の電源を入れ… 「…はっ?」 その水晶がボウ、と紫色に強く光った。 魔力知装置のレベル分けは白、緑、青、黄、赤、紫の順でヤベーって事になってるが、正直赤ですらそういない。赤レベルの魔物って言うと魔王レベルだ。もうやばい。 で、紫となると…災害レベル。存在してるだけで平和の均衡が崩れかねない位のもので、一応設定はされてるがまず存在しないであろうと判断されるくらいの魔力を感知した場合に設定されているレベル。 まさか…と思ってゆっくりそのレンガ造りの家に振り向く。 見かけ上は何の変哲もないただのボロいレンガ家だ。だがこの反応のせいか、言いようのない禍々しさが発されているように見えてきた。 「…これやばいな…」 こんな所に何でそんな訳のわからん反応が…!この家か…?そんなヤバイ奴の(ねぐら)だったってのか…!? ギルドに緊急連絡を出す?いや、無理だ。何なら俺の存在ももう気づかれてる可能性すらある。 不味い不味い不味い…一旦離れるか…! と、腰を上げようとして。 「……?誰?」 その声に振り向いてしまって、部屋の中の人と目があった。 銀の長髪と薄紫色の目が印象的な女の子だった。 同時。 「っどあっ、」 ボン、と音を立てて魔力感知装置が爆発した。 はあ!? 「……え、っと…?とりあえず、入る…?」 「え?あ、ああ…?」 魔力の発生源がこの子…?こんな年端もいかなそうな子供が? というか何でこんな所で暮らしてんだ?見た感じ一人だろ、親は? つか魔力感知装置爆発したよな?何で?魔力量に耐えられなかったとか言う? 何なんだマジで一体…… ───── 途中まで晴れてたのに急に大雨降ってきたなーとか思いながら適当に取った本を逆から読むとかいう遊びをしてたら、魔力の塊の反応が家の横に現れた。 何事だろ…と思って窓開けて見てみたら、人がいた。 なんで?なんでこんなとこに? とりあえずビッチャビチャだったから中に入れよう…ん?いやタオルくらいは流石にあるよ。この服同様に劣化しないようになっちゃって常に新品同様状態になってるタオルが二枚。ほぼ使わないけど。 とりあえず玄関に向かってもらってタオルを差し出すと、ちょっと引きつった笑顔でありがとうございます、って言われた。解せない…何で引きつってる…? まあ置いといて。見た感じは多分まだ20歳にもなってない感じかな?18くらい?成人はしてても冒険者になって日にちが経ってる感じじゃないね。 でも背は高くて余裕で私より大きい。当たり前か。私小学生くらいの体だし。 あと、黒髪が短く切り揃えられてて目がちょっと薄め。多分赤とかそこら辺…?珍しー。私の知ってる人ってほとんど全員黒髪黒目だけど…あ、そういや魔力持つと髪色とか目の色変わるんだった。それにそういやそもそも私が例外みたいな髪色と目の色してたし。 「……とりあえず座……」 座って、と言おうとして座る場所がないのを確認。とりあえず床に散乱してる本を片付けて(部屋の隅に寄せて)おいてスペースを作る。 「……座っていいよ…あ、お茶とか淹れるけどアレルギーとか、ある?」 「えっ、いや…」 「…良いから」 多分、特にいらない、という旨の事を言おうとしたのであろう若人君(仮称)を手で制しつつ聞くと、特に無いとのこと。じゃああれでいいかな、と薬棚の引き出しを一つ開けて、粉末を取る。 とりあえず座るように促して、だいたいこれくらいかなーと匙で取ってお湯を入れて濾してコップに淹れる。 なんかある程度の道具は残ってたからこうして人が来ても色々できるんだよね。 ……にしても流れ着いてきてた本の一つ、薬草の図鑑みたいなのがこんな所で役に立つとは思わなかった。暇つぶしにそこら辺に生えてた薬草摘んできて調合まがいのことやってたりもしてたから色々あるにはあるんだよね…まあ道具とかも特にないからそんな本格的なものじゃないけど。 「…どうぞ、私はいいから」 お盆に乗せて机に置くとおそるおそるといった風に礼を言いながらコップを取る若人君(仮)。…なんか警戒心の強い小動物みたい。 「あ、美味しい」 「…なら良かった。それホタルグサとマックラグサのお茶」 「っ!?ゲホッ、ゲホ、」 と、若人君(仮称)がむせた。…どうしたの? 「ま、マックラグサって猛毒じゃないですか!?」 「……ホタルグサと合わせると毒は消えるよ…流石にお客さんに毒は出さないよ」 マックラグサは触った手で目とか擦ると失明したりする事から付けられた名前。食べると黒い斑点が体中に浮き出て高熱を出して最悪死ぬけど、ホタルグサ…日光の光をためて夜に光る特殊な草はその毒性を中和させてくれる。ちなみに両方そこら辺に生えてたやつ。どうせ人はおろか魔物すら近寄らないんだから多分天然物。 マックラグサ、毒はあるけど味は良いみたいだからね。 …ちゃんと毒性が残ってないかは自分で確認してるよ、流石に。アテになるかは知らないけど。 そもそもあんまり物を口に入れられないし。お腹壊すし、最悪吐くし。 「な、なるほど…ならまあ…?」 なんで疑問形…?
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