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また昼前頃に起きて畑、読書、たまに川といつも通りの生活を続けること一週間くらい。 「……どうしようかな」 そう、一週間くらい経ったのだ。つまりそろそろレオン君が来てもおかしくない。 正直やる気は全くと言っていいほど起きてない。 まあでも認可しちゃったものは通さないとねぇ…うーん…面倒だぁ… とかそんな事を考えながらも私がするのは、畑の方向の家の壁に取り付けてある椅子に座って畑とか景色を眺めながらボーッとすること。 屋根もあるから影ができてて直接日光が当たることもない、それでいて適度に明るくてちょうどいい。 と、少し涼しめの風に吹かれて、無風のときは暖かい気温に身を包まれてとしていると少しずつうとうとしてくる。 しょうがない、怠惰な私ひはテキパキとした動きには合ってない。猫みたいに自由に生きるくらいがちょうど合ってる気がする。 別に抗う気もないし、そのまま目を閉じてきもちいい感覚に身を任せていた。 「……………」 やっと一週間経って、師匠のいるところへ行く日だ。ギルドで適当に討伐依頼を受注して、それから家に行ってみたところ、師匠が家の横でお昼寝してた件。 あ、本人には「師匠と呼びたいなら私を納得させられる魔法を使えるようになってから」って言われてるから心のなかでだけ師匠呼びして、実際ではエレオさんって呼んでる。…正直そのうちボロが出そうではあるけど。 うーんさて…え、どうしよう、なんか起こすのがすごい気の毒なくらいめちゃくちゃ気持ちよさそうに寝てるんだけど… この一週間。 この一週間、師匠に教わったことをひたすら反復して延々と魔力を操る練習をしてきたんだ。んでようやくちょっとコツが掴めかけてきたところなんだよなぁ。 早く見てもらいたい気持ちもあるけどなんか起こすのがとてつもなく申し訳ない気持ちもある。 なんか…こうして見ると普通の街の女の子って感じなんだよな…俺より年下みたいな見た目だし、整った顔してるし。 でも、そういや最初に会ったあの日の途中から魔力の反応がピタッと止んでるんだよな。 ……いや、よく考えてみればこれが魔力操作の“体に纏う”ってやつか。多分気を使わせたんだろうな…って言うか、精度やばくね?普通の魔法使いでもこんな制御するの無理だと思うぞ? そもそも魔力感知装置は周囲の魔力の波長からどれくらい強い魔物…というか魔力反応があるかを調べる機械。要するに魔力をから反応するのであって。 今の魔力感知装置の反応は無色…つまり反応無し。 紫レベルの魔力を完全に制御しきって外に漏らさないようにするとか…まじで意味わからんのだが。 ……いや…意味わからんと言うか無理では? 俺今めっちゃ気張って10分が限界だぞ?寝たりしたら秒速で解けるぞ? 「…………《xsmall》ん《/xsmall》ぁ…?」 …あ、起きた。 「………ぅぁー…」 なんて?? 「……ごめん、普通に寝てた」 「いや、それは良いんですけど」 とりあえず家に上がってもらって事情説明。3秒で終わった。 しょうがないよ、お昼寝が気持ちよかったから抗うのなんか無粋だもん。 「……おぉー…」 で、そこから本を一冊受け取ってから魔法を教える時間に。 魔力の認知、操作はある程度はできるようになってた。本人曰くこの一週間ずっと反復練習をしてたらしいけど……まあ、誤解を恐れず、率直オブ率直な感想をさせてもらうと、一週間常に反復してこれか…って感じ。 まあでも、相変わらず体はガッチガチだけど…ギリギリ及第点、かな?…あ、解けた。 「どうですか!」 「……まあ…魔法を使うってこと一点にして言うならギリギリ及第点かな。もうちょっとリラックスしてできるようになった方が良いとは思うけど…今の状態だと頑張っても中級魔法が限界じゃないかな」 基本的な魔法には下級、中級、上級とランクが付けられてる。そこからは自分で魔法を改造したりしてオリジナルの魔法を作ったりするんだけど、魔法を改造するのは上級魔法を使えるくらいにならないとまずできない。 中級魔法ぐらいだと…まあ魔法で木を倒すのができる感じかな。 ダメージソースのイメージ的には、下級魔法が木製バット、中級魔法が斧、上級魔法がハンマーみたいな感じだね。 「師匠もすごい自然に魔力制御できてますもんね」 あー…これはなんというか。またレオン君に教えてるのとは違うんだけど…まあいいや。詳しく説明するの面倒だし、そういうことにしとこう。 「……ん。で、どうする?一回下級魔法と中級魔法の扱いに進んでもいいけど、このまま魔力制御を完璧にするまでやってもいいよ」 そう言うとレオン君はバッとこっちを向き直した。…目がキラキラしてる… 「教えてください!是非!」 わお上昇志向。こっちとしては完璧にしてもらったほうが私が楽でいいんだけど。 まあいいか。 「……良いよ…とは言っても、魔力の操作がそれなりにできてるならそこまで時間はかからないだろうから、これも反復練習になるけどね」 とりあえずは仕組みから教えようか、とレオン君を座らせて、棚から分厚い本を一個引っ張り出す。そこら辺に落ちていた魔導書だ。…色々関係ないのが落ちたけどまあ良いや。 …本来なら。こういうのは当人の感覚とかコツとかを教えながらやるんだろうけど、生憎私の使う魔法と世間一般に浸透してる魔法じゃモノが違うから正直言うとこういうのがないと分かんないんだよね… そこはともかく。 世間一般で使われてる魔法はどんな魔法を使うにしても大きく分けて三段階の工程を踏んで発動させる。「魔力の操作の延長で魔法陣の展開」「魔法陣の仕組みに応じた動きに魔力を流す」「魔力を溜めて放出する」の三段階。 本職が魔法職の人はだいたいこういうのを感覚でできるらしいんだけど、そうじゃない人はこういうのを一つ一つ意識してやらないと途中でわけが分からなくなる。だから魔法を教えるのは難しいってわけだね。二足歩行の人間に四足歩行の猫が「どうやって歩いてるの」って聞いても「足を動かして?」ぐらいしか言えないのと似てるかな。実際はもっと複雑なのに。 「……とりあえずは魔法陣の展開からだね」 でもまあ正直魔法陣が展開できたらあとは簡単なんだけど、これが難しい。 体外に魔法の生成物を作るのって難しいらしいからね。私はそもそも必要ないからやったことないけど。理論上はでき…あいや、無理か?いやどうだろう。やってみないとわからないけど微妙なところ。使のは無理。 「魔法陣…」 「……そ」 とりあえずいちばん簡単な下級火魔法の火球(ファイアボール)の魔法陣を教える。まあ形的には丸の中にもう一個丸、その中に正三角形が入ってるだけみたいだし。 下級魔法ならだいたい全部似たようなものだよ、三角が四角になったり十字になったり六芒星になったりするくらい。 と、レオン君は分かりました!と言ってその場で構築を始めようとする。 こらちょっと待ちなさい。 「……家の中でしたら家が燃えるからやめて」 本とか家の内壁の木の部分とか燃えやすいもの多いから。 とりあえず外に出てもらった。どうせなら、ということで畑の横で。なんでなのかと言うと屋根があるから私が座って見れる。変な労力は割きたくないし。 「ぬぬぬぬ……」 が、どうやら一向にできないみたいで。 「……力みすぎてるよ。感覚的には魔力を纏う最初のやつと同じはずだから…体の近くで鎧みたいにしてたのを体の外で魔法陣の形にする感じ」 「は、はいぃ…!」 ……まあとは言っても難しいものは難しいんだろうけど。 正直言ってコレばっかりは私も詳しくは教えられない。さっきも言った通り、私は魔法に魔法陣なんて使ってなかったからね。 魔法陣の研究がされ始めたの自体、つい5か600年前位らしいからね…それまでは…まあ、色々あったんだよ。 まあこれも反復練習としか言いようがないかな。がんばれー。
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