親切心の芽生え

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「相手の為を思ってやる行動は、本人が口に出してこれを望んでるって言った事をやらないと。それをやったらどんな結果になるのかをちゃんと最後まで責任もってこそ親切、なんじゃないかな」 「……」 「そんなに思いつめたり泣かなくてもよくない? 悪い事はしてないじゃん」 「……うん」 「一つ一つは取り返しがつかないわけじゃない。何度でもやり直せるし、まあ彼氏さんとは別れたけど、二股した向こうも悪いしね。そんな男と一緒にいてもしょうがないじゃん。別れて良かったんだよ」 「うん」 「その彼氏さん以上に素敵な彼氏見つけて幸せになる事が、誰も傷つかずにみんながハッピーだよね」 「そう、だね。うん……そうかもしれない」  いろいろ言ってみると女は泣きながらうんうんと頷いて興奮していた様子が落ち着いてきた。彼女は涙を拭いて立ち上がる。 「ありが……」 「まあでも、死にたいって言ってたし。今更どうでもいいよね。じゃあね」  笑いながら蹴り飛ばす。え、と驚いた顔をして女は落ちて行った。  飛び降りしようとしてる人を必死に説得する警察とかの映像見てると思うよね。「押してやればいいのに」って。だって、死にたがってるんだから。  こういう親切心って、人なら芽生えるのが普通だ。俺って良い奴だよな。
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