名も無き男の物語

贈り物は降って来る

　良い子のみんな、サンタさんだよ。

　え、今クリスマスじゃないって？　まぁそう固いこと言わずに。サンタさんの活動がクリスマスしかダメなんて、サンタさん仕事してないじゃん？いい子にプレゼント贈るのがサンタさんの仕事だ。
　キョロキョロしても見えません、サンタさんは見られたくないからどこにいるのかは内緒。

　みんなはずっと小さいころから病院に入院していて、毎日毎日苦いお薬を飲んで腕に針をブツブツ刺されて、お部屋から出られない子もいるよね。大きな病気だから仕方ないんだけど、お友達もいないし幼稚園とか小学校にも行けない。

　そんな毎日なのにちゃんとお医者さんの言うことを聞いて病気と戦っているみんなにサンタさんがプレゼントを贈ることにしたんだ。
　あ、勘がいい子は気がついたみたいだね。今一番欲しいものを紙に書いて、って昨日言われてたでしょ。あれ病院のイベントじゃなくてサンタさんのイベントでした～。毎日頑張っているご褒美だよ。おう、すごい反応。そっか、喜んでもらえてサンタさんも嬉しいよ。
　それでね、みんなが書いた物って靴下に入らないものばっかりだったし、普通に贈ってもつまらないからサンタさんちょっと考えたんだ。みんな窓の外を見てごらん。身を乗り出して落ちないように気をつけて。
　今からサンタさんがみんなの欲しいものを雨みたいに降らせてみせるよ。それを好きなだけつかんでね。
　何でって、ほら。サンタは空から来るでしょ。いちいち部屋に入るの大変じゃない？　だからソリからそのまま落とします、ってことで。

　じゃぁ一人目、アヤカちゃん。目がキラキラしてるね、なんて書いたか覚えてるかな？　そう、星！　君はお星さまが欲しいって書いたね。お星さまそのものは取ってくるのちょっと難しかったから、星の形をしたおもちゃ、クッキー、チョコ、飴、あと星の砂って言う砂が星の形をしてるもの。沖縄って所じゃないと取れない珍しいお砂なんだ。とにかく星ってつくものいろいろ用意したよ、頑張って。
　アヤカちゃん五歳か、おててがちょっと小さいね。そんな君でもちゃんとつかめるようにたくさん買ってきたから大丈夫。焦らなくていいよ、じゃあ降らせまーす。

　結構取れたね、おめでとう。落ちちゃったやつも後で拾いに行っていいよ。多分割れてないと思うから、全部軽いし。
　それにしても欲しいものはお星様か、素敵なものだよね。星が降ってくるってすごくない？　絵本の中みたい。
　お星様にお願い事をすると叶えてもらえるからか。そっか、病気を治してくださいってお願いしたいんだね。きっと叶うよ、頑張って。