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「あとねえ、拘束された状態から抜け出す縄抜けは得意。手錠でも縄でもガムテでも何でもできる」
『今のは本当ですね。嘘ではありません』
ごそごそと動くとその音が伝わったらしい周囲の人が息をのむ気配を感じた。
「よ、っこいせ、っと~。はい成功」
すたん、と立ち上がる音に皆ガタガタと必死に動き始める。試しているようだ。コツ知らないと無理だと思うけどな。
ぱさ、と目隠しをしていた布を床に放った。ふう、視界良好。さっきからおかしなゲームをしている奴を見つけて手を振ってみる。反応なしか、つまんないな。
「た、助けて! お願い!」
「頼む! これを解いてくれ!」
「嘘つくと死ぬんだっけ?じゃあ正直に言うよ。 い や だ ね」
わざと最後ゆっくり言えば再び悲鳴が上がった。
「何で助けなくちゃいけないんだよ。めんどくさい」
『今のは本当ですね。嘘ではありません』
「財布とかはないけどバタフライナイフは取らなかったんだ。ありがと、これ結構気に入っててさ。切れ味良いから」
『今のは本当ですね。嘘ではありません』
「あ、この場にいる奴全員殺すね」
『今のは本当ですね。嘘ではありません』
辺りから泣き声、悲鳴、命乞いが聞こえてくる。それを無視して俺は歩き出しソイツの目の前で足を止めて。
ざく。
結構大きな音がしたな、まあ思いっきり切ったから仕方ないか。
「この場にいる奴、って言っただろ。お前もだよ」
どさ、と音がしてソイツは崩れ落ちる。それと同時にソイツの後ろに見えていた扉からガチャンと鍵の開く音がした。ドアノブに手をかけるとあっさりと開く。
「お、ドア開いた」
俺の言葉にやったあと歓喜が沸き起こった。助かった、と全員肩の力を抜いてだらんと姿勢が悪くなる。それを俺は首を傾げて見る。何でこいつら喜んでるんだろう。
「アンタら俺の話聞いてた?」
「え?」
「全員、って言っただろ。全員は全員だよ」
「え……」
しいんと静まり返った中、俺の歩み寄る足音と全員の悲鳴が響く中、後ろから聞こえた。
『今のは本当ですね。嘘ではありません』
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