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ごきげんよう
ごきげんよう。と申し上げたのは、形式的な挨拶のようなもので、私と貴方の縁は、それで済むものではありませんね。
私は過去、つらい闇の中にありました。
そんな時、貴方の優しさに触れ、心を洗われたのです。
それは大したことじゃなくて、
ただ「大丈夫ですか?」と言われただけ…。
でもそのタイミングも声の質も、その時の私をまるごと包む温かさがありました。
ふふっ。
それから私は、少しずつ元気になり、空想のなかで、貴方と話すようになりました。
それはもう幸せなことで、素敵なものをたくさんもらいました。
長い間、友達と恋人の境界線にいて、私は貴方を人生の一部にしてしまい、苦しんだ日々は内緒話ですけどね。
あら、
ちょっと、風が吹いてきましたね。
この会話も、誰にも聞こえない。
たとえここで私が貴方を殺しても気づかれないぐらいに風が鳴りますねぇ。
えっ?
声が聞こえない、ですか?
そうね、私の声は小さいから…。
ふふっ。
次はどこで会えるかしら。
もう一度、もう一度、
何度でも会えますもの、心配しないで。
だから「さよなら」じゃなく、
「ごきげんよう」が良いのです。
私の大好きな貴方。
私の恋を吸った貴方。
ずっと一緒にいてください。
また会えるまで、「ごきげんよう」
今、私は最高に晴れやかな気持ちです。
end.
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