春のbpm

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あの後、教室に鞄を取りに戻ったが、その時の記憶は曖昧だった。 ガタンゴトンと電車の揺れに合わせて自分も揺れる。まさに上の空というやつで、電車の天井に掲示されている広告をぼんやりと眺める。 そこには、飲料水を片手に爽やかに微笑む女性アイドルが映っていた。 自分が女だったら良かったのだろうか・・・。 いや、「好きになる要素がない」ままの自分の性別が女だったとしても、きっと結果は同じだっただろう。 「あ、テレビでよく観るやつだ!」 「え?ほんとだ!わたし、まりかちゃん好きなんだよねー!可愛い〜」 その時、一つあけて隣りに座っていた女子高生2人組の声で、現実に引き戻された。 何やらきゃっきゃと楽しげに、広告の女性アイドルについて話している。アイドルにあまり詳しくない自分でも広告に映っている女性アイドル、喉渕まりかの名前は知っていた。しかし、同性にも人気があるとは知らなかった。 「わたし、CMで流れている曲も好きなんだよね〜、なんだっけ・・・曲の名前忘れたけど、なんとかジャムが歌ってるやつ」 「ああ!いいよね〜!歌ってるボーカルもイケメンだしさ〜」 やはり美人やイケメンは得だと思う。
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