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外はすっかり薄暗くなっていて、仄かに明かりが灯り始めた街は、帰路を急ぐ人々で溢れていた。
自分はと言うと、その人々の波に逆らうようにふらふらと街を漂う。
正直、今は真っ直ぐ家に帰りたくない。
家に帰って、自分の部屋に1人で居たら嫌でも考えてしまいそうだ。
忘れたかった。全てを。
そして、誰かに話しを聞いて欲しいとも思った。
しかし、こんなことを誰に話せばいいのか。
他の友人に?親に?
男に告白して、玉砕したと?
出来るわけない。余計に傷を深くするだけなのは目に見えているし、自分は同性が好きだとカミングアウトする気もない。
そんな勇気も度胸もない。そんなものは、今日の告白で全て使い切ってしまったと、先刻までは思っていたはずだった・・・。
ふいに目に止まった、建物と建物の間の小さな路地。
「こっちってたしか・・・」
帰路から外れて、いつの間にか繁華街近くまで歩いてきてしまっていたようだ。
大人は良いよな・・・。酒飲んで、気分良くなって、嫌なことも忘れられるんだから・・・。
飲んだこともないお酒に勝手な憧れと幻想を抱きながら、吸い込まれるように路地に足を踏み入れていた。
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