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そこは、想像していたよりもずっと人が多く、色とりどりのネオンや電光掲示板がひしめき合っている明るい街だった。
今、自分は二丁目に来ている。
華やかな街や人々、場違いなのは明らかだと思うが、ここまで来て引き返す気にはなれなかった。
街の雰囲気に当てられたように、妙な高揚感と自暴自棄な気持ちが、自分の中を満たしている。
しばらく辺りを、上から下まで眺めながら歩いていると、数メートル先にいた看板を持ったスーツ姿のような出立ちの男と目が合った。
男はすぐさまこちらへ足早に近づいて来る。
明らかに客引きだ。
「やべ・・・!」
近づいてくる男から逃げるように、咄嗟に来た道を駆け足で戻り始める。
自分の目的はそういう店のはずだが、反射的に足が動いてしまった。
どうする?!
しばらく戻ったところで、目に付いた石造りの建物の前で足が止まる。
周りに建つ他の店みたいな、騒がしさも派手さもないが、しっかりとした造りだと言うことがわかる重厚感のあるドア。少しではあるが、店先には綺麗な緑の植物も置かれていて、ドアの横に、電光の文字で「stella」と綴られていた。
道を振り返ると、男は追ってきていない。
外観からどういった店なのかは分かりづらいが、barのようだった。
店の雰囲気に惹かれ、自然とドアノブに手を掛けていたーー。
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