春のbpm

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ドアをくぐり、店内に足を踏み入れると、 頭上で、カランコロンとドア上のベルが綺麗な音色で鳴った。 店内は、外観と同じように石造りになっていて、外から見るよりも広く、静かで落ち着いていた。 カウンターらしきテーブルの後ろの棚には、高そうなラベルの付いた酒瓶がずらりと並べられている。 清潔感のある店内の香りに混じって、微かにだが酒の匂いがする。小さく流れているBGMの音楽も高級感を感じさせて趣味が良い。 こんなところでお酒飲んでいたらかっこいいだろうな・・・。 そんなことをぼうっと考えた。なんだか店の雰囲気だけでも酔えそうだ。 「いらっしゃ〜い。・・・て、言ってもまだお客さん1人もいないんだけどね〜!」 明るい声色でそう言いながら、カウンターの奥から男性が出てきた。 「あら〜、ひとり〜?じゃあワタシと一緒に飲みましょう!好きなところに座ってね〜」 静かで重厚感のある店内に似つかわしくない、 ややテンションの高めなその男性に勧められて、そろそろとカウンター奥の席に座る。 「何飲む〜?ご新規さんみたいだから、最初の一杯はワタシの奢りよ!」 先ほどから引っかかっているワタシと言う一人称や、妙に間延びした喋り方。カウンター越しに男をまじまじと見る。 たしかに男ではある、と思う。髭もあるし。 歳は40代ぐらいだろうか。バーテンダーのような格好に、ガチっとした体型。それなりに長身だった。清潔感もあって、きちんとしているだけに、どうしても口調と見た目とのギャップを感じてしまう。 「や〜ねーあんまりジロジロ見ないで〜! それとも見惚れちゃった?」 そう言って、ウフフと効果音が付きそうな感じで笑った。 うまれてはじめて見た。オネエというやつだ。
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