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「エヴァン、君のいない世界になんて、少しも未練はなかった。あの神殿で出会って、一緒に過ごすうちに、俺はどんどんエヴァンに惹かれて……」
「ちょっ、ちょっと待って。あの時、俺はジェイとは十も歳が離れて……」
「そんなことは関係ない! エヴァンが優しく微笑んでくれる度に、胸が締め付けられるように熱くなって、いつも触れたいって思っていた。生まれ変わっても、ずっとエヴァンを想っていて、会えたら絶対抱くって決めて、今まで生きてきた」
「だっ……」
ガラハットの想いの強さにクラリとしてしまった。
確かに外見は同じなので、会えば分かるとは思ったが、それで今同じ寝台にいる状態に、時を超えた執念を感じてしまった。
「神はさ、エヴァンのことを気に入っていたんだよ。だから、記憶もそのままで、同じ姿に生まれ変わらせてやるけど、本気で娶るつもりなら、自分で探せって。覚悟を試されたのかもしれないが、神すら、俺の愛の強さを甘く見ていたようだな」
自分に会うために、王という地位を捨てて、命を絶ってまで追いかけてきた男。
間近でその顔を見つめたリッツは、手を伸ばしてゴツゴツとした顎や頬に触れた。
「ジェイ……大きくなったね。あの頃は、もっと丸くて可愛かったのに」
「なんだよそれ。成長した俺は気に入らないのか?」
「ううん。すごくカッコ良くなった」
「エヴァン……。エヴァンが死ぬ時、俺は愛しているって叫んだんだ。エヴァンは私もって言ってくれた」
「えっ」
「なんだ、忘れちゃったのかよ」
その言葉を聞いて、リッツとしての人生を思い出した。
魅力的な誘いは数限りなくあった。
そのどれもを断って、一人でいたのは、何故だったのだろう。
心のどこかで待っていた気がする。
この黒い髪で金色の目をした愛しい人に、再び巡り逢えることを……。
そう、ただ可愛がっていたジェイから、いつしか向けられる視線が変わったことに気がついていた。
それを嬉しいと思う自分を否定してきた。
神官は神の使い。
結婚や、恋愛すら許されない。
ましてや、同性に特別な想いを寄せるなどというのは、もっと許されないことだった。
しかもまだ相手は子供。
抱いてはいけない想いを知られたら、引き離されてしまう。
エヴァンは自分の想いから目を背けて、ただの世話役としての姿勢を崩さなかった。
しかし、たった一度だけ。
まさに死を目の前にした時。
自分を抱くジェイの口が、愛していると動いた気がした。
どうか許してください。
そう思いながら、私も、と口にしたのだ。
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