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初めて君に会った時のことを覚えている。
まるで親の仇でも見るような目をしていた。
一緒に過ごすうちに、だんだんと和らいでいき、目の奥に本来の優しさが見えた時は、嬉しかった。
悲しい運命に引き裂かれて、終わってしまった人生を今でも思い出すのは、君がいたからだろう。
血に染まった体を抱いて、涙を流す君を忘れることはできない。
もっと早く、素直になることができていたなら、今になってそんな後悔をしてもどうにもならない。
なぜならそれは前世の記憶だから。
かつての自分、エヴァンがこの世を去ってから百年。
この世界の創生神メネス。
古から伝わる、神の力を持って生まれたエヴァンは、幼くして神殿に帰し、国の平和と発展のために祈りを支える神官となった。
神の力とは、病や傷を治す治癒力と、神の声を聞き、神と対話することができるものだ。
人々の暮らしを支え、国王に神の言葉を伝える存在として尊ばれてきたが、時の王は平和よりも戦いを好んだ。
何度も和平への道を進言したが、聞き入れてもらえることはなく、戦火は至る所で上がっていった。
すでにその頃になると、エヴァンは神の声を聞いて自分の死を予期していた。
戦火はついに神殿を取り囲み、攻め込んできた敵国の兵に殺されてエヴァンは生涯を終えた。
死の後は闇で、その中で神の声を聞いた。
長年に渡り、神の声を聞いた者として、百年後、次の生を約束する。
次生では、お前の希望を叶えようと言われたのを覚えている。
争いのない、平和な人生を歩みたいと伝えた。
願わくば、愛する人と共に……
その時、目に浮かんできたのが誰だったのか、神がどう答えてくれたのかは覚えていない。
こうして、エヴァンの人生は終わり、百年後、別の人間として新たに生を受けた。
今度は、神の力を持たない平凡な人間として……
「リッツさん! 出番です」
鏡の前で髪を整えていたリッツは、名前を呼ばれて分かったと返事をした。
口元に薄っすらと紅をのせると、顔色が良く見える。
舞台の上では、これくらい派手にしないと目立たない。
鏡に映っているのは前世のエヴァンか、今世のリッツか。
時々分からなくなる時がある。
なぜなら神の悪戯なのか、姿形は前世と全く同じままだからだ。
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