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☆
「さて、それではみなさん。よーく見ていてくださいね。高価な機械ですので、壊さない様に」
ノピア先生は四人を連れて特別訓練室へ。
特殊合金の厚い壁に魔法結界を張った、体育館ほどはある広い部屋だ。
その奥に立つのは人型の機械。
初めて見るセンシサイザーの姿に、四人はわっと声を上げた。
そしてノピア先生は、それこそ女性ファンが増えそうな、うっとりする様な美声で歌い出す。
──聞こえるだろう君よ
冷たいその体に
呼び覚ませ 熱き鼓動
世界の希望のために──
この国、オペラケスタでは魔法の呪文は「歌」である。
聴く者の心を震わせ、揺さぶる様な歌声を捧げる事で森羅万象に宿る精霊の力を借り、魔法を発動させるのだ。
従って歌う者の声質や歌唱法と波長の合う精霊の方が力を借りやすく、得意な魔法となって行く。
……ウォーン……
先生の呪文詠唱を受けて、センシサイザーの機械の体にLEDの息吹が迸り、活動を始める。
彼は人口声帯により歌を捧げ、得手不得手無くあらゆる魔法を使役出来るロボットだ。
──受ケ止メヨウ ソノ想イ
君ガ描ク 夢ノタメニ
立チ上ガロウ 何度デモ
痛ミ知ラヌ 戦士トシテ──
ただし血の通わぬ人口声帯であるため、あくまで疑似魔法であり、例えば炎を噴き出しても幻術の様なもので、熱気を感じても物を燃やす事は出来ないが、魔法で相殺するにはそれ相応の威力が必要である。練習にはうってつけだ。
『ソレデハ先生、行クゾ』
「どうぞお手柔らかに」
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