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思わず素っ頓狂な声を上げた先生だが、さすがにクラリネも幻滅している場合ではない。
「せ、先生、冗談はやめてください」
「いやその」
二人の会話に、ブオーン……と割り込んで来る機械音。
『……コレデ良シ。
オ前ラ、子供ダト思ッテ手加減シテヤレバ、イイ気ニナリヤガッテ……!』
センシが活動を始めると、体表を走る様に点滅するLEDが、いつもと違う光り方をしている。
まるで呼吸に合わせる様に規則正しく、明るくなったりぼんやり暗くなったり。
いや、呼吸などしていないはずなのに。
「こ、これは……
みなさんの魔法が想定よりも強かったせいで、良心回路が故障したのでしょうか?いや、もしかしたら初日の私の呪文で既に……」
『イイカラ、オ前ハソコデ、ジットシテイロ』
くるりと子供達に向き直るセンシ。
だが、どうした事かそこから一歩も進めない。
『ヌッ!?』
──偉大なる大地と共に
僕らは生まれ 歩いて行く
果てしない地平の果てを
僕らはいつも 夢見ている──
ゴンボの重低音の詠唱が静かに始まっていた。
大地の精霊の心を震わせる優しく力強い歌声は、特殊合金である事など関係なく、センシの足元の地面を自在に揺らし、滑らせ、歪ませる事で歩行を不可能にさせたのだ。
ジャンプしようとしてもタイミングを合わせて大きく沈み込んでしまう。
まるでリズムが合わない演奏の様に。
「大地の不協和音!みんな、逃げる!カーボル、しっかりする!」
やがて植物の蔓まで伸びて来てセンシの脚をがっちりと捕らえた!
ゴンボはなんと右手でクラリネを、左手でまたも震えて固まっているカーボルをひょひょいと抱えて走り出す!
『逃サン!』
「いいや、逃がしてみせるぜ!この俺がなあ!」
眼光鋭くリュートが立ち塞がった!
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