マリオスの手紙が届いたら

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 私とマリオスと同じ、現在高校一年である矢野(やの)柊くんの家にやってきた。  彼の実家は不動産屋さんみたいなのをしていて、彼はいわばお金持ちで、彼は中学一年の時に誕生日プレゼントに両親から赤い屋根の一軒家をもらってからずっと一人暮らしをしている。建物は広く、設備は問題はなく、あそこにいれば、入り口に大きな門もあるし警備も万全のはず。  矢野くんの見た目は多分人から見たらかっこいい、たぶん。かっこいいって周りから言われていたはず。でも私にとってはそんなことどうでもよくって、つまり今言いたいのは、私がマリオスから逃げるときにもってこいの場所に彼が住んでいるってこと。  中学の時にマリオスと私の側にいた彼。  中学卒業してから柊くんは今何してるだろうか、なんてそんなのは本当にどうでもいい。  とにかく助けなさい。  マリオスと私の側にいたのはいつもあなたなんだからね。  ピーンポーン、ピーンポーンと二回ベルを鳴らすと、カメラつきインターホンから柊くんの声がする。 「……嫌だよ、俺」  私はカメラつきインターホンをじっと見つめる。 「ひどいよ、まだなにも言ってないのに断るなんて」 「マリオスから手紙がきて、マリオスがあさひちゃんに会いに来るんだろ? 会いたがってるんだろ?」  柊くんは小学一年の頃からふとした時に『ほんの少しだけ人の心を読める』というちょっとした特殊能力を持っているらしい。本人が言っていた。まさかーと思っていたが、マリオスが忘れ物したときも、私が落とし物をしたときも彼は何もいわずとも見抜いてきやがったのだ。  だから今の私は彼のその『ほんの少しだけ人の心が読める能力』をもう当たり前にとらえている。
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