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律の瞳の中にいるのは僕だけだ。
けど、今度はその事実に僕の方がニヤけてしまった。
律の視界を占領しているのだと思ったら、嬉しくって。
「なにニヤついてるの?」
「律の視界を占領したから」
ちょっぴり得意顔でそう告げると
「瑞穂の視界は俺が占領してるけど?」
と言われて
「え?」
思わぬことを言われたせいで間抜けな声が出た。
「ははっ。かわいいな、瑞穂って」
「……かわいいっていうのは、男には言わないだろ」
嫌だと言うより恥ずかしいから、ちょっと不満の滲んだ口調になってしまった。
なのに
「でも瑞穂には言いたい。瑞穂、かわいい」
あっさり返されて、もう返す言葉がなくなった。
律は僕をどこまで甘やかすつもりだろう、と嬉しい不安に襲われる。
「瑞穂の全部、俺が占領するから」
「……それ、僕も律のこと占領することになるけど、いいの?」
「めちゃくちゃいいね」
律はクシャッっと笑って僕にキスをした。
恋人同士のキスは、じわじわが広がるのにスイッチも入るから大変だと、僕はこの時初めて知ったんだ。
End.
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