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「ほぅ」
兄鬼は積み上げられた米俵を見て声を上げました。この村の土地の広さや人間の数は、兄鬼が住んでいる村とそう変わりありません。つまり、収める年貢の量も変わらない筈。それなのに、この蔵には兄鬼が住んでいる村の蔵に貯蓄されている米俵の倍はあろうかという量の米俵がございました。
もはや言い逃れできまい。
兄鬼は己の目でしかと見、証拠を得たのです。
さあ、蔵を出ようと身を小さくしようとした瞬間、足元をスルリと動く気配が。
「うわっ!」
ニャァ!
いつの間にか、猫が蔵に入り込んでいたのです。驚いた兄鬼はバランスを崩し、壁に手を着きました。すると壁に立てかけられた梯子がガタリ、と大きな音を立てます。
「誰か中にいるのか!」
先程荷車を運んだ人間が蔵の物音に気付いたようで、外から声が聞こえます。更に複数の足音が聞こえ、兄鬼は焦りました。今の身体の大きさではすぐに見付かってしまいます。
身体を小さくし、蔵が開いた瞬間に人間と入れ違いに外に逃げようかと考えましたが、踏み潰されてしまうかも知れません。
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