鬼兄弟物語

13/21
前へ
/21ページ
次へ
―ころんころん ニャァ! 小さくて丸い物体(・・)が転がるのを見た猫は、饅頭めがけてまっしぐらに走り出します。 やった! しかし喜んでいる暇はありません。饅頭まで辿り着くと、猫は走るのを止めてしまいました。どんなに兄鬼がおしりを叩いても動く気配がありません。屋敷の門はまだ先。小さな身体で地面を走るのは危険です。猫の背中にしがみつき、兄鬼は考えていました。すると… ―ガラガラガラガラ 米俵を運んでいた荷車の音が聞こえてきたではありませんか。見上げると、荷台は空。恐らく村の外れに戻るのでしょう。兄鬼は猫の背を台にしてヒラリと跳躍し、荷車の影になる縁にしがみつきました。 荷車が屋敷の外に出て村の外れまでくると、兄鬼は荷車から飛び降り、再び成人男性の大きさに戻ります。そして一目散に自分の住む村を目指したのでした。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加