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さて、兄鬼が隣村で見てきた物や聞いてきた事を領主様に話すと、領主様は頷きました。
「やはり民から年貢を過剰に搾取していたか…。直ぐに使いを中央に出し、役人を隣村の領主の元へ検分に遣わして貰おう」
「役人が隣村に来るまでどれくらいかかる?」
「中央までは多少距離がある。しかも遣いが到着してすぐに役人を派遣するという訳にはいくまい。そうだな……十日はかかる」
「分かった」
「そんな事を聞いてどうするつもりだ?」
「何もない」
そう言うと、領主様の部屋を出ていきました。
兄鬼は村で一番高い木の枝に跳躍すると、そこに腰掛け人々の様子を見ます。すると木の下に弟鬼がやってきました。
「兄者ぁ〜!饅頭食べよ〜」
「ここで食う」
兄鬼が手を出すと、下から弟鬼が饅頭を投げました。それを上手に受け取ると、大きな口で頬張ります。一緒に食べる気なのか、弟鬼は木の下に座り饅頭の包を開きました。
ここは平和だ。
兄鬼は人々の顔を見て、そう思いました。隣村で最初に声をかけた子どもや、村の人々の顔を思い出します。
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