鬼兄弟物語

17/21
前へ
/21ページ
次へ
真夜中ゆえ、隣村に着いても辺り一面真っ暗です。村の中心地を更に進むと、ぼんやりとした松明が見えてまいりました。領主の屋敷です。門の近くまで来ましたが、見張りは居ない様子。 「待ってろ」 低い声で弟鬼に命じ、兄鬼は弟鬼の肩からヒラリと跳躍しました。夜空に舞い上がる小さな身体は月光に照らされみるみる内に成人男性の大きさになります。軽々と門を飛び越え音もなく着地すると、内側から鍵を開けました。 ―ギィ 木の軋む音と共に扉が開きます。音をなるべくたてぬよう門は壊さなかったのですが、屋敷の中にいる者には扉が開く音が聞こえたようで、方々で「曲者!」と声が上がります。 兄鬼再び跳躍し、弟の肩に乗りました。成人男性程の大きさでも、弟からしたら赤子が子どもになったくらいの感覚なのでしょう。 まるで重さを感じないかのようにゆっくりと屋敷の奥に向かって歩き出したその時、中から護衛の人間が出てきたのです。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加