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「あ…あ………」
「ふん」
十名程出て来たものの、弟鬼の姿を見た瞬間護衛の人間は怖気づいて言葉も出てこない様子。兄鬼は弟鬼の肩の上で仁王立ちなり、腕を組みました。
「領主を出せ」
「あ、あ……」
「聞こえなかったのか?領主を出せと言った」
ギロリ、と弟鬼が睨みをきかせると護衛の人間は飛び上がり転がるように屋敷の中に消えていきました。程なくして寝間着姿の領主が屋敷から出てきます。さすがに領主と言うだけあって、怯みながらも正面から鬼兄弟を見て口を開きました。
「こんな夜更けに何の用だ。化け物め」
遠慮の無い物言いに、兄鬼は冷たい視線を投げかけます。
「領主よ、民から過剰に年貢を搾取してはいまいか」
「か…っ、過剰に搾取などしていない!決められた量を……」
「今年は雨が多く稲が根腐りし、採れ高が少なかった。それにも関わらず例年と同じか、それ以上に民から年貢を徴収してはいまいな?」
「し……してない」
嘘だ。
兄鬼はその目で確かに見たのです。うず高く積まれた米俵を。
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