21人が本棚に入れています
本棚に追加
「では、蔵を確かめさせて貰うぞ?」
「待て」
「何だ」
「お前の望みは何だ?金か?土地か?米か?ある程度の望みなら聞いてやれるぞ」
兄鬼は呆れました。この期に及んで保身に走ろうとする領主が殊更醜く見えます。
「んなもん、興味ねぇよ」
そう吐き捨てて、兄鬼は弟鬼の肩から飛び降りました。主人の前に歩み寄るとグイッと顔を近付けます。
「……なぁ、蔵を見られたら何かマズい事でもあんの?」
そう言った瞬間、領主が動きました。
「………っと!」
兄鬼は素早く身を引き、間一髪で領主が繰り出した懐刀を躱します。次の瞬間、兄鬼の背後から赤く太い腕が伸びてきて、領主を掴み上げました。兄鬼は跳躍し、再び弟鬼の肩に乗ります。
「ぐ……っ」
弟の大きな手にギリギリと握りしめられ領主は苦しそうに呻きます。
「後生だ……!命だけでも助けてくれ!」
「民の苦しさを、思い知ったらいい」
この村で初めて声をかけた子どもを思い出し、兄鬼は領主を睨みました。
「こ、米が、米が欲しいのだろう?蔵に…一年分の米がある。それを、お前達にやろう」
そう言った瞬間、ビクリ、領主を締め上げる手が弱まりました。食べ物に目がない弟鬼が反応してしまったのです。兄鬼はギロリと弟鬼を睨みました。
最初のコメントを投稿しよう!