鬼兄弟物語

3/21
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
鬼にもなれず、人間にもなれず。 中途半端な二人の子を授かった夫婦は、人間からも鬼からも離れ、山奥でひっそりと暮らしておりました。 ところがある日、山奥に狩りに来た人間に見付かり、父鬼と母親は殺されてしまうのです。残された子ども二人は命からがら必死の思いで逃げ、何とか生き延びる事ができました。しかし身寄りがありません。 何日も何日も歩き続けた二人は、ついに山を出て麓で倒れてしまいます。再び目を覚ました時には、何故か人間の家におりました。 殺される! 二人は慌てて逃げ出そうといたします。しかし歩き続けた身体はボロボロ、腹も減って力が出ません。もはやこれまで……そう、覚悟を決めた時でした。 「目覚めたかい?」 穏やかな声と共に、中年のがっしりした体格の男が部屋に入ってきたのです。二人は恐ろしくなり、部屋の隅まで這いずりました。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!