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「おい、お前」
畑を耕している子どもに声をかけると、子どもはビクリとしました。子どもと言っても十歳はとうに越えていそうな背丈です。細身、というよりは痩せ細っている、そんな子どもが怯えた様子で兄鬼を見ます。
「怖がるな。聞きたい事があるだけだ」
「……何でしょうか?」
「飯は、十分に食えているか?」
「………」
兄鬼がそう聞くと、子どもは下を向いて黙りました。国は、民が困窮する程の年貢を課したりはしません。
「これだけ米も野菜も実っていれば、十分に食べられない事無いだろう」
すると子どもは頭を横に振りました。
「何だ、はっきり言え」
兄鬼が痺れを切らしそう言うと、子どもは顔を上げ涙目で訴えます。
「言えません!言ったら、領主様が…」
「領主?」
すると子どもは、耕していた鍬を投げ出し逃げてしまいました。やはり、不正がありそうだと兄鬼は更に村の中心地に足を進めたのでございます。
商いが行われている中心地はたくさんの人が行き交っておりましたが、皆口数が少く重苦しい空気が漂っておりました。
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