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さようなら
『おかえりなさいませ。現在2×××年九月一日。外気温、49度、高温。室温、25度、正常。体温、正常。外出の際はオーバーヒートにご注意ください。』
長い眠りから覚めた時、声が頭の中に流れた。目を開くと、頭の大きな人たちがこぞって私を見ていた。瞬時に生体認知機能が発動し、いくつもある顔を一斉にスキャンして誰かを教えてくれる。全員私のデータにはない、研究員と学者のようだ。彼らは私が目を覚ますと歓喜に溢れた。
あまりに時間が経ちすぎていたため自分が何者かもすぐに思い出せなかった。そんな私の少しの混乱も見逃さず、声が教えてくれた。
『旧名、沢田絵里。2034年持病が悪化、心臓発作で死去。享年58歳。生前はAI技術の一研究員として活躍。その知能を讃えられ、重要人物として死後、脳を保存。技術が発達した現在、アンドロイドとの融合に成功。今後もその知能を持って活躍することを期待されている。』
ああ、そうか。私、死んでたんだ。
脆い人の体はあまりに突然壊れてしまう。だから私は昔、高知能なAIを搭載したアンドロイドの製造に携わっていた。
そして同時に、アンドロイドに高知能な人間の脳を融合させる研究にも加担していた。
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