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メロンソーダ
私は茶色い梁が張り巡らされた喫茶店の紺色のソファに座っていた。あまり好きではないコーヒーの苦い香りが鼻に付き、それが少し残念だった。
「お待たせしました」
透明なビニールクロスのテーブルに、ボート型のガラスの器が運ばれて来た。真ん中にはカラメルソースが滴る卵色のプディング、白いホイップクリームが絞られ輪切りのバナナとカットされたマスクメロンが飾られていた。私は真っ赤なシロップ漬けのさくらんぼを口に入れた。むにゅっとした食感に邪魔な種、もう一個食べたいと思った。
「お待たせしました」
次に運ばれて来たのは汗をかいたグラスに注がれたメロンソーダだった。プリンアラモードでお腹が膨れた私は底に沈んださくらんぼをストローで突きながら氷のカラカラという音を楽しんでいた。
「美味しい?」
「うん、でももうお家に帰りたい」
その後、ママは黙ってしまった。男の人はコーヒーにちびちびと口を付けながら、ギラギラと光る腕時計に目を落としていた。
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