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平手打ち
カランカラとカウベルの音が響きそちらを見ると”お母ちゃん”と”お父ちゃん”が鬼のような形相で仁王立ちしていた。怖かった。私が叱られるものだと首をすくめたが、叱られたのは”ママ”だった。
”お母ちゃん”が”ママ”の頬を平手打ちし、倒れた背中を踏み付けた。”お父ちゃん”がその男の人の胸ぐらを掴んだその時、お店の奥から走って来た白と黒の服を着たお兄さんに止められた。「ごめんなさい、母ちゃん堪忍して」と泣く”ママ”、赤い絨毯に頭を付けて土下座をして謝る男の人。
”お父ちゃん”の銀色の車に乗って見たそのお店には、赤とんぼのマークの看板がピカピカ光っていた。
”ママ”は”お母ちゃん”に内緒で私を保育園から連れ出した。
家族ぐるみの嘘で固められた嘘が、わたしの記憶の中で少しずつ露見し始めたそんな出来事だった。
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