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「もう、あきらめたらどうです?」
「このままでは私、帰れでしょ!?」
「あれはただの波の影ですよ」
私は、大手出版社の新入社員、七倉菜々。好奇心旺盛で負けず嫌いの性格が上層部に伝わり、入社早々、月間『ミステリー検証』という人気雑誌のレポーターに抜擢された。世の中の不思議な現象の謎を解き明かすことに興味を持っていた私にはうってつけの仕事だと思って私は歓喜した。けど、早々に危機的状況に陥った。
「もう1週間ですよ。まだ滞在して取材を続けるんですか? そろそろ繁忙期を迎えるんで出来れば・・・」
「もう出て行ってくれというの? なら、いいわ。私、外でテントを張ってでも取材を続けます」
「無茶言わないで。まだ、外は寒いですよ」
旅館のオーナーの長沢真司さんが眉をしかめながら言った。
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