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2. 出会い―城崎涼子
川嶋 望は困惑していた。
眼の前に優しそうな顔の真っ白いおじいちゃんが1人。髪もヒゲも真っ白でまるでサンタクロースだ――但し服は赤ではなく白いが。
おじいちゃんの左側に同じ様な真っ白な服を着た茶髪に明るい瞳の美少年がいて、右側には背の高い騎士のような格好で腰に物騒な得物をぶら下げた男がこちらを睨んでいる。そいつは黒髪に暗い色の瞳のようだが、日本人とはかけ離れたバター顔だ。
そしてその3人の後ろにキンキラキンの頭をした青い目の青年が驚いた顔で立ち尽くしていて、更にその横には真っ黒なローブを纏った赤毛の男が訝しげな顔でこちらを見ている。
コイツらももれなくバター顔――所謂西洋人の風貌だ。
「あら? もうフランスに着いたの? おかしいわね飛行機を降りた記憶がないわ・・・」
望がボソリと呟いたと同時に後ろからツンツンと背中を突付かれた。
「え?」
振り返ると石造りの床に高校生くらいに見える日本人の女の子が顰めっ面で座っている。
「お姉さん、日本人ですか?」
「ええ。貴女も?」
「良かった~。ここ何処でしょうか?」
顰めっ面がホッと緩んだ。
「フランス?」
「いえ、多分違うんじゃないかなと思いますけど・・・」
2人は申し合わせたように今座っている場所をキョロキョロと見回した。
「ウ~ン、空港じゃないわね。そもそも飛行機に乗って席に座った事しか覚えて無いもの」
望は自分の座っている石造りの床を手のひらで触ってみた――剥き出しの石に見えた床はほんのり温かく感じられた。
壁も天井も同じ様な白っぽい石で作られていて、窓は無いが四角い部屋はうっすら明るい。
但し天井に電灯がないのでもしかすると部屋の壁や天井が発光しているのかも知れない。
「私、直ぐに寝ちゃったから全然状況がわかんないんだけど」
望が眉根を寄せるが、目の前の少女も
「私ずっと起きてましたけど、どうしてこんなトコに居るのかさっぱりです・・・」
彼女もそう言って眉を下げた。
彼女の膝にカラフルな北欧柄のリュックが乗っているのを見て望は慌てて自分の手荷物を思い出し自分の横に赤いトランクが鎮座しているのを目にしてホッと溜息をついた。
「オッホン、もうそろそろ落ち着いたかね?」
目の前の真っ白いサンタが口をきいた。
「あ、蝋人形じゃ無くて人だったのね」
と、望がボソリと小さく呟いたのを聞いたのだろう。
後ろからプッと小さく吹き出した気配がした。
「お姉さん、面白いね」
「そう? よく言われる。望よ。川嶋望。宜しくね」
「私は涼子。城崎涼子です」
おじいちゃんをよそに2人は握手した。
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