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6. 魔法って簡単?
「魔法が使えるのなら、ノゾミ殿が魔女に間違い無いですな」
ふむふむと頷く神官長。
「え、じゃあ私が聖女?」
自分の鼻先に自身の指を向ける涼子。
「消去法で行くとそうよね。涼子ちゃん何か魔法使えそう?」
「えぇ~? 望さん、なんでそんなに簡単に魔法使えるんですか」
「ほらあ、昔の動画で○リ・ゲラーのスプーン曲げ見たことある? あれで、あ、できるってなんとなーく思えた人だけが何人も曲げられたっていうの」
「え、アレって手品じゃないの?」
「思い込みが肝心なのよ。出来るって思ったらすぐできちゃうやつ。自己暗示に近いかな? 脳天気な感じで『あ~出来る出来るオッケーね』みたいな? さっきのは魔女なら魔法が使えるっておじいちゃんが言ったから、『あ~魔女なら魔法使えるの当たり前だわ、オッケー』ってやってみたら、出来たの」
「「・・・」」
目が点になるおじいちゃんと呆れ顔になる涼子。
「そんなんでいいの?」
「良いんじゃない? 出来たし。この世界って大至急聖女と魔女をセットで絶賛募集中なんでしょ?」
片手を前に突き出して、何とか魔法を出してみようとジタバタしている涼子を横目に、神官長に問いかける望。
「そうです。いや、しかしノゾミ殿それは規格外です。普通なら最初は魔術師の指導の元に魔法の練習が必要ですから・・・」
「昔魔法を使う戦隊ヒーローモノが流行ってて、幼馴染とよく宿題しながら見てたのよ。で、魔法使うのに憧れてたのよねえ」
「それ、私見たこと無いです・・・」
「涼子ちゃん多分まだ産まれて無いから・・・」
若干遠い目になる望。
「魔女が魔術師から魔法習うのなら聖女の場合は?」
「神官からですな。聖魔術というのを覚えていただくのですが、魔術というより『祈り』に近いですから、本来ならそっちのほうが簡単ですなぁ・・・」
「あ、私お祈り毎日してるよ?」
「「え?」」
「マイ数珠も持ってるから」
そう言って、肩から掛けていたポーチから、紫色の珠が繋がった長い数珠を取り出した。
「「マイ数珠!?」」
「うん。浄土真宗って他人のお数珠は使っちゃ駄目なの。お箸と一緒で自分専用の数珠を持つの」
「悪霊退散とかするの?」
「そんなわけ無いじゃん『南無阿弥陀仏』って唱えるだけだよ。そん時に勝手にお祈りは頭でしてるけど・・・」
「どんなの?」
「色々。世界平和とか身の安全とか?」
「信仰心が強いのね・・・」
「分かんないけどやってみようか? 健康長寿とか?」
そう言いながら長い数珠を二重にして手に持って、涼子は空の見える四角い窓に向かい
「南無阿弥・・・」
と何回か繰り返し唱えた・・・
「おおっ!」
「「?」」
「私の腰痛が直りましたぞ!」
「「・・・・・・」」
「ホッホッホ、素晴らしいですな」
神官長が、さっきまで若干曲がっていた腰を擦りながら背筋を伸ばしてソファーに座り直す。
「「簡単過ぎる・・・」」
女性2人が呆れ顔になった。
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