8. 異世界転移

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8. 異世界転移

 「おまたせしましたな。ささ、聖女殿も魔女殿も、この世界での宿泊施設にご案内いたしましょう」  ――なんか神官長の身長伸びてない? ああ、腰痛で腰曲がってたんだわ。  と、頭の中で納得する望と、 「おじいちゃん、腰が治ったから背が伸びたねっ! 良かったねっ!」  と思い切り事実を告げながら、神官長の背中をバンバン叩く涼子・・・  やはり正反対・・・ 「そ、そうですな。リョーコ殿のおかげですな」 「へへへッ!」  涼子ドヤ顔である。 「おじいちゃん、じゃなかった神官長様って呼べばいいのかしら?」  一応気を使ってみる望。これからは上司? である。  多分だが・・・ 「おじいちゃんでいいですぞ? 皆そう言いますから気になりませんので。寧ろ神官長と呼ばれる方が稀ですなぁ・・・」  むむう、と指を折り曲げて何かを数えているアレン神官長。 「陛下と妃殿下を筆頭に片手で足りるくらいにしか名前も肩書も呼ばれてない気がしますな。まぁ、そもそも出不精なので、滅多に人と会いませんからなぁ」  神官長、実はヒキニートかもしれない・・・  ×××  「ところでさっきの部屋って、召喚のための部屋なんですよね?」  きれいに磨かれた大理石の敷かれた廊下を何処かに向って案内されていく望と涼子。  望は例の赤いスーツケースを引っ張り、涼子は大きな花柄のリュックを背負っている。 「そうですな。あそこでないと転移魔術は成功しないと言われております。肉眼では見えませんが床に魔法陣が描かれておるんですが、それに各属性の魔力を注ぐと発動するんですがな・・・」 「「へえ~」」 「決まった日にしか動かんのですよ」 「ん? つまり?」  首を傾げる涼子。 「いつでも使えるわけじゃないってことよ。ねえおじいちゃんその条件ってどうやって決まるの?」 「分かりませぬ」 「「え?」」 「実はあの部屋自体が開かずの間でして」 「「え?」」 「異世界からの客人の召喚の必要性がある時だけ勝手に開くのです」 「自動なんだ・・・」  なんと完全フルオート。 「呼び出す文言(もんごん)だけは魔術師や神官が自在に変えることが可能なのです」 「あ、だから昔と今は呼び出す条件が変えられるのね」  『ぽんッ』と手を打つ望。 「そういう事です。嘗て(かつて)は拉致まがいだった異世界からの聖女召喚も、今やそうならぬように細心の注意を払って行われております」 「ねえ、ソレって頻度ってどのくらいなの?」 「じつはソレもまちまちでして・・・」 「「・・・」」 「この世界で大掛かりな取り組みをしなければいけない災厄が起こった時で、我らの世界の住人では対処しきれない様な時にしか部屋は開かないのです。どういった仕組みなのかも我々にはよく分かりません」  頭を横にフルフルと動かすアレン。 「次元を跨ぐ転移魔法は普通ではありえないくらい魔力を使います。しかもあの部屋を使わなければ出来ません。この世界の中だけなら魔術師や神官でも魔力の多いものなら場所の移動位ならできないこともないのですがね」 「「・・・そうなんですね」」 「ええ。下手に次元をまたごうとすると、生き物だと身体がバラバラになってしまいます」 「「ひえッ!」」  実は結構危ない橋? を渡ってここにやって来たのかも知れないと2人は冷や汗をかいた・・・
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