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9. バレたぁ・・・
神殿と呼ばれる場所の長い廊下を歩きながら、神官長の説明が続く。
「1つ説明しなければいけないことがありましてな」
珍しく言い辛そうにもじもじするおじいちゃん。
「残念ながらこちらの世界に御二方を定着させる方法が現在1つしかないのです」
「「定着?」」
「はい。そもそもこの世界の住人でない御二方は存在自体が大変不安定なのです」
「戸籍とか?」
「まあ、それは当然王国が責任持って新たに作ります」
――戸籍があるんだ・・・
「そういった外的なことではなく、魂というか精神世界の問題でしてな。人は産まれた時からその世界に魂が根付いています。死んだ時にはその括りが解けて何処にでも行けるのです。それこそ行き先が異世界だとしても。ですが、」
「うん、私達は生きてるわけよね? 死んでないわけだから」
「はい。ほとんどの魂は元の世界にとどまり続け生まれ変わることを望みます。その世界に自分の関わりのあるものや人、歴史といったものがあるからなのですが・・・」
「「へー」」
「生きている間でもその世界との繋がりが解けることがあります」
「「え? どういう事?」」
「個人と個人が繋がった時に、世界との繫がりよりそちらの繫がりが強くなります」
「「は?」」
「つまり、人同士の営みは世界との繋がりを断ち切るくらい強いのです」
「営み・・・?」
「繋がり・・・? え? ソレって!」
望の焦った顔を見て、神官長がウンウンと頷き開き直るように言い放った。
「つまりセックスですな」
×××
「要するに、この世界の男性とセックスしたら、ソイツと繋がるから元いた世界との繋がりが消えるって事で合ってる訳ね?」
「簡単に言うと、そういう事ですな」
おじいちゃんの頭にタンコブが出来ているのは気の所為ではない。さっきの説明の途中で望と涼子の2人にボコられた。
「但し心が繋がらないもの同士の交わりは無意味です」
「つまり、相手と相思相愛じゃ無いと駄目って事よね?」
「そういう事です。更に女性の場合は初めての相手でないと無意味です。既に最初の相手と繋がっていますからな」
ウンウンと首を縦に動かすアレン神官長。
「え、待って。じゃあ処女じゃないと駄目ってことよね」
「勿論です」
「ひょっとして召喚の条件に・・・?」
「勿論盛り込んでおります。非常に重要な部分ですからな!」
えっへんといった感じで腰に手を当て胸を張る白い老人・・・
ということは、あの部屋にいた残り4人の男性に自分が未経験だという事がモロバレな訳で・・・
思わず廊下に膝をついた望である・・・
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