96. ヘソを曲げる乙女達

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96. ヘソを曲げる乙女達

 第2王子ヘンリーと第3王子ノワールを前に完全にヘソを曲げた望と涼子。 「私達の意志を完全に無視するのですから、王家の要請。いいえ、全世界の要請でも赴くことは御座いません」  ニッコリと仔猫のような可愛い顔なのに笑顔が非常に怖い望。 「そだよ~。散々さぁ最高権力とか持ち上げるだけ持ち上げてさ、こっちの言い分まるっきり無視とか話しが違いすぎるもん。王太子様だってルーカスさんと望さんの婚約を早めてくれるって言ってたって聞いたもんね~。なのにどっかの王女様の言い分聞いて(てのひら)返しなんてさー」  へっ! やってられるかといった感じで肩を竦めて手をヒラヒラさせる涼子。 「そうそう、涼子ちゃんだってカインさんがいいってお披露目の時に公言してあったのに。年の差がありすぎるから駄目だとか、後から文句言うとかあり得ません。『災厄』を片付けた時だってカインさんとルーカスが私達のパートナーでしたわ? 彼らがいたから安心して頑張れたのに。酷いです」  プッと頬を膨らませ怒った顔をする望・・・ 「だよね~。陛下が寄親(よりおや)だからって酷いよね~。この国って16歳で成人って聞いてたけど? 成人してても伴侶選ぶ権限のない最高権力って、なんなん一体?」  やけ食いのようにココアパウダーをまぶしたトリュフを猛スピードで口に運ぶ涼子。 「「私達絶対に離宮から出ませんからッ」」  最後には2人揃って王子達にジト目を送る・・・ 「「あ・・・あぁ」」  流石の彼らもこれは不味いと思ったらしく、2人の後ろに立っているルーカスに助けを求めて視線を向けるが 「・・・望以外の伴侶は必要ありませんから」  アッサリ断られたようだ。  ――従弟が本気で怒ってる・・・ 「困ったね」 「ああ・・・あのさ、叔母上から陛下に対して絶縁状が来てるって聞いてる?」 「「ええ」」 「此の後私も送りますが? 何か不都合が?」 「「・・・」」  王子達は互いの顔を見て眉を下げた。 ×××  時間は若干遡る―― 「アナタッ!どういうことですかッ!」 「父上ッ! どういうことです?」  国王陛下と重鎮達が王妃と王太子の2人に責められていた・・・ 「いやあのその、アレはだな・・・」 「恐れながら、申し上げ・・・」 「「うるさいッ!!」」 「「「「「「ヒエッ!」」」」」」  王妃と王太子の恫喝で、重鎮と共に陛下も飛び上がった・・・割と情けなかったりする。気のせい? 「セオドア(王弟)の時、魔女殿の不況を買って許されたのを忘れたのですか? あの時彼女はセオドアの不敬は不問と仰りフォルテリア小侯爵との縁を望まれたはずですわ?」 「それを受け入れたのは此方ですよ? 口約束とはいえ何故魔女殿との約束を違えようなどと考えたのですか? 王家の信用問題に関わりますッ! ・・・どうやって乙女達からの信用を取り戻すつもりですか!」  滅多に声を荒げない王太子も、流石(さすが)に自分と魔女との約束を反故(ほご)にされ怒っているようである。 「いえ、あの。それに関しましては、『災厄』をおさめた夕方遅くに魔女様が消えかけたという報告が御座いまして・・・」 「らしいな。報告はルーカスからも来ている。召喚された当日に魔女殿が不安になって元の世界に戻りたいとつい願ったそうだが?」 「えー、私共の考えとしましては、フォルテリア小侯爵のことを魔女様が本気で愛していないからなのではという結論に達しまして」 「「はぁッ!?」」 「災厄を押さえた後、彼が信用ならないと魔女様が判断し元の世界に戻ろうとしたのではないかと・・・それ故消えかかったのではないかと危惧したのです」 「・・・フム続けろ」 「ですので、一旦婚約は取りやめもう少し様子を見てはどうかと。何しろ『乙女』達はこの世界に召喚されてまだ1週間しか経っておりません」 「「・・・確かに。で?」」 「小侯爵の性格も相まって、ひょっとしたら行き違いが生まれているのではないかと愚考いたしました。こちらとしては一方的に彼女達を呼び寄せた訳ですから、責任があります。その方々に不本意な結果になる伴侶を勧めるのは良くないのではないかと、陛下と相談いたしました」 「ふうん・・・じゃあ、私共の甥でもあるルーカスに、あれだけフォルテリア侯爵家が毛嫌いしているリンデル王国のアーシア王女を娶るように王命を出したのはどういう事かしら?」  王妃の冷た~い視線が陛下を()めつける・・・が、 「私はそんな王命など出して無いぞ? そもそもローザがあの王女を嫌ってるだろう?」  え、何のこと? と陛下が首を傾げた――考えてみればこの国王陛下、結構なシスコンなのでローザ夫人に嫌われる様な真似をするはずが無いのである。 「陛下の王印が押された書状が侯爵家に届いたそうですわ? そのせいでローザ夫人がいたく憤慨し、彼女からの絶縁状が王家宛に届きましたわ!」 「「「「「「えぇ~」」」」」」  王妃のその言葉でその場が騒然となったのは言うまでもない。  おや、大変です・・・
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