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97. 誤解を解きたい王子様×2
「・・・とまあそういった感じで? 一旦婚約を急ぐのではなく、ノゾミとルーカスの意志を確認してはどうかと言う事を、陛下も考えたらしい。ノゾミの叙爵後でも婚約は遅くないだろうという意見もあったらしい」
ノワールはため息を付いて一旦説明をフィンレー交代してもらうべく、彼の脇腹を肘で突付く。
「但しコレは決定事項ではないんだよね。今度の協議会でルーカスとノゾミが一緒に出席の上で互いに同意なら、婚約式を急いでもいいんじゃないかという話に落ち着いてるんだ」
「ホントに?」
望の声と、涼子の疑いの目・・・
「それと、涼子とカイン殿の話しは、どうしてその話しが持ち上がったのかが、全くわからないんだよね」
「どういうことですか?」
「騎士団にその話しが流れた事自体がデマみたいなんだ。陛下も重鎮もその事に関しては全く関与していなかったんだよ。それにしては事細かに理由付けがされてるだろう? 信憑性を上げるためにそういった裏事情を知ってる者が、信じやすい様に流布したんじゃないかと思う」
「「・・・」」
望と涼子は自分達の後ろに待機しているルーカスを見上げる・・・
――信じていいのかしら?
――嘘じゃね?
「2人の信頼が我々に対して薄いのはよく分かった。対してルーカスに対する信頼は厚そうだな」
思わず肩を竦めるノワール王子。
「・・・あの。ノワール王子」
「? なんだいノゾミ」
「私とルーカスは元々知り合いです」
「・・・!」
「あ? 何のこと?」
ノワールとフィンレーの反応は真反対だった。
×××
人払いをして遮音魔法を展開後、そもそもルーカスと望の出会いがこの世界で出逢ったのが初めてでは無いことを説明した。
「ああ、やっぱりか。何となくそんな気はしてたよ」
ソファーに沈み込んでガックリと肩を落とすノワール王子。
隣りのフィンレーは難しい顔をしているが、涼子が頬張るチョコトリュフが気になるだけかもしれない。
「フィンレー王子、食べる? 望さんに作って貰ったんだけど」
「貰う! ・・・美味い!!」
「ちょっと~王子様のくせにがっつかないで下さいよー!」
やっぱりそうだった・・・
「ま、異世界でも幼馴染で恋人同士なら、僕らより信頼を寄せるのは当たり前だねえ・・・仕方ないな」
フィンレー王子が口の周りについたココアパウダーを拭いながらそう言うと、
「涼子も完全な異世界人の我々より安心だもんな」
ノワール王子が苦笑いをするが。
「あんまりそれは関係ないよ?」
涼子はアッサリそれを否定した。
「まあ、お兄ちゃんとタイプが似てるから健一さんって親しみやすいのはあるよ。ルーカスさんは違うけどね。でも私はカインさんも信頼してるよ」
王子2人がわからないという顔をしたので、涼子は溜息を1つ付いて腕組みをするとジト目になった。
「そもそも何度も何度も王宮側が望さんとルーカスさんの婚約を遅らせる様な雰囲気が信頼をなくす原因だと思う。あの王弟ってオジサン見てて気持ち悪かったもん。あんなの押し付けて来るんだ~って思ってさー。そんでもって今回は王命で隣国の王女でしょ? そもそも王宮側って言ったって、ルーカスさんと王族護衛騎士さん達以外殆ど面識ないじゃん。ノワール王子もフィンレー王子も私達と何回会った? そんなんじゃ信頼なんか構築出来ないでしょッ!」
涼子の辞書には歯に絹を着せるという言葉は存在しないらしい。
「「・・・すまない」」
確かに涼子の言う通りである。
信頼を勝ち得るには密なコミュニケーションは人として絶対に欠かせないものである。
「・・・そもそも『召喚の乙女』を王族側の都合で勝手に色々と利用し過ぎでは?」
「「う・・・うん。まぁ」」
ルーカスの言った言葉はある意味2人にとっては痛かった・・・
×××
その後、ローザ夫人が――若干グシャってしまった跡のある――王印の押された書類は、ノワール王子に手渡された。
「叔母上。この度のことは・・・」
「貴方が悪いんじゃない事は分かってるのよ?」
「はい申し訳ありません」
それを見ながらフィンレーが、
「初恋の人に嫌われたら痛いよねぇ」
と望達にボソリと呟いた。
「「え?」」
「ああ。やっぱりそうですか」
「なんだい、気がついてたのルーカス」
「まぁ。そうで無ければ禁術なんか頼まれても使わないでしょう。ノワール王子は夫人の為に敢えて禁を犯す事を選んだのでしょう」
「そういう事だねぇ」
「「・・・成る程」」
ノワールとローザ夫人のやり取りを、全員が横目で見る中で1人だけ
「犯人捕まえなくちゃ気が済まないッ!」
涼子が気合を入れていた・・・
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