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98. 国家間協議の行方など知りません
「ウ~ン、じゃあ2人共どうしても出席するのは嫌なの?」
「ええ」
「うん」
望と涼子の返事に続き
「そもそも偽の王印が使われた時点で『召喚の乙女』と『トランジア王国』の信頼関係にヒビを入れようと企んだという疑いがあります、ソレが解決しないうちは彼女達の身の安全を考えても出席などさせませんわ」
とローザ夫人が扇で口元を隠したままニッコリ笑う。
――ローザ夫人めっちゃ怒ってるよね~・・・
王子達が遠い目をした。
「もちろんルーカスもそうですが、カイン副神官も同様、出席は危険を伴います。こう言ってはお袈裟と思うでしょうが、偽王印を使った者も、噂をばら撒いた者も狙いは『召喚の乙女』と、その『伴侶候補』なのですからね」
ローザ夫人が目つき悪く言い切った。
「まずニセの王命書」
「次に王印の有無の確認」
「リョーコ様とカイン副神官に関する噂の出所」
「ノゾミ様とルーカスの婚約」
王子たちの眼の前に握りこぶしを差し出し1つ1つ指を立てるローザ夫人・・・
「これらが解決するまでは、はっきりしたお返事はできません。陛下にもそうお伝え下さい」
最後にニコリと笑う笑顔がひっじょーに怖かった・・・。
×××
それまで口を閉ざしていた望が口を開く。
「そもそも私達がこの世界にやって来てからやっと今日で1週間です。その間に色んなことがありすぎて、滞在期間がもっと長い気にもなりますけど・・・」
望が正面の王子達に真っ直ぐ顔を向けた。
「陛下達にもその事をお気遣いして頂き、更にこちらの心情まで心配をしてくれありがたいと思います」
皆が頭を下げる望を見つめる。
「ですが国家間の問題を協議する場に私共が出席するのはおかしいと思うのです」
「へえ。望は何でそう思うの?」
フィンレー王子が面白そうに目を輝かせた。
「『災厄』を解消するために我々2人はこの世界に召喚されました。その仕事は無事に終了しました」
「ああ確かに」
「本来の目的は達成しました。会社組織で考えれば結果を出した、という事になります」
「「「「「・・・」」」」」
全員が、ん? という顔になる。
「それに対する報酬を私達は最初から提示されておりませんが、その間の衣食住は保証されていました。それが成功報酬でしょうか?」
「え、いやそういう訳では・・・」
ノワール王子が、首を傾げた。
「違いますよね?『災厄』が訪れる前に与えられた待遇ですから、云うなれは離宮の滞在は『任務遂行』の為の拠点提供ですよね? 云うなればそちらの必要経費」
「あ、ああまぁ確かにそうだね」
「フィンレー王子殿下は私達2人にこうおっしゃいました『君達次第ってことになるんだけど、我々の世界を守ってくれないか?』と」
「あ、うん確かに」
馬車の中で言った覚えは確かにある。
「それに関して私は『了承』した覚えは1度もありません。多分涼子ちゃんもです」
涼子に目を向けると彼女はコクコクと頷いていた。
「あ~・・・確かに」
一瞬しまった、という顔をしたフィンレー王子に笑顔を見せる望。
「我々は王子達に与えられた任務を遂行し、成果を上げました」
「「「「・・・」」」」
「我々はそれに対する正当な報酬を要求します。『魔女』と『聖女』はそちらが与えてきた肩書であり、私共はその肩書を望んだ訳ではありません。ある意味我々は今だに無報酬で放置されたままです」
「「「・・・」」」
「雇い主はどなたですか? 契約内容は? 成功報酬は? それをおざなりにしたままで次の『任務』を与えられても首は縦に振れません」
「「え・・・」」
「良い待遇を与えられることで目眩ましをさせられたまま報酬も与えられず次の任務を与えられるって? 私共は貴方がたの奴隷ですか?」
「いえ、そんな事は考えていませんわノゾミ様!」
ローザ夫人が流石に彼女が本気で怒っているらしい事に気が付いて慌てて声を上げた。
望――
実は凄く怒っていました・・・。
「国家間協議の行方など、我々には正直関係ありません。私達は書面で正式に何らかの雇用契約を結んでいる訳ではないのですから」
望は初手から何かが間違っていると感じていたのだ。
ビジネスに置き替えれば答えは簡単だった。
そのせいで、成功報酬が一転二転としてしまう事に望は気がついたのである・・・
「そもそも成功報酬はなんですか?」
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