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久しぶり
久しぶり、なんだよ真っ黒に焼けてさ。
なんだか雑誌に出てくるモデルみたいじゃん。
今度はどこの国に行ってきたんだよ、なんて、インスタ見てたから本当は知ってるんだけどな。
俺の方は相変わらずのひきこもり生活ですよ。
ガリガリに痩せて生っ白い肌で。
ひたすら人の目を避けるようにして、自ら影の中に溶け込んだ気になってる。
そんな事はどうでもよくてさ、みんな、お前のことを心配してたんだぜ。俺が言うなって話だけれども、お前、定住場所決めずにふらっといなくなるから。
今日の飲み会には誰も来れなかったみたいだけど……きっとみんな忙しいんだろうな。
まあ、この年になると「いつものメンバー」が突然変わることだってあるけどさ。
何も言わずに急にいなくなるのは、やっぱちょっと寂しいかな。
それにしてもすげー吹雪だ。帰りの電車、止まったりしないよな。
――なんだよ、そんな怖い顔すんなよ。
わかってる、こんな雪の日は「あの日の事」を思い出すよな。
俺だってそうだよ。
あれからもう十五年も経つのに、いつまでもあの日のことを消化できないでいる。そうじゃなかったらひきこもりなんてやってねー。
……うるせーな、そんな目で哀れんでんじゃねーよ。
殺されかけたあの子、今、元気だと思うか?
そう、今日お前と二人っきりになれたなら、あの子の話をしたかったんだ。
***
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