親爺さんの口笛

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親爺さんの口笛

「C-HC、B- BB、As-AsAs、B-」 今日も2/2拍子の単調な口笛が聞こえる。 別に面白くも、変わった人な訳でもないが、 明け暮れに繰り返すこの旋律を耳にする度に、         何かしら僕の興味がそそられる。 いったい此の旋律は何の歌のつもりなのだろう。 さらには、満州の電気技師だったという、 今は、掃除夫として一つの歌に明け暮れる此の人の心とに……。 僕は偶然にこの歌の正体を見破って、ひそかに小躍りした。 「C-HC、B-BB、As-FisAs、B-」 何だ、''もしもし亀よ''じゃないか。 今は白髪を加える此の親爺さんに、僕は 此の時以来妙な親しみを感じながら、 今日も口笛を聞く。 「C-HC、B-BB、As-AsAs、B-」 (注•アルファベットは音名。CをCis、HをBとするとはっきりする。)
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