12人が本棚に入れています
本棚に追加
親爺さんの口笛
「C-HC、B- BB、As-AsAs、B-」
今日も2/2拍子の単調な口笛が聞こえる。
別に面白くも、変わった人な訳でもないが、
明け暮れに繰り返すこの旋律を耳にする度に、
何かしら僕の興味がそそられる。
いったい此の旋律は何の歌のつもりなのだろう。
さらには、満州の電気技師だったという、
今は、掃除夫として一つの歌に明け暮れる此の人の心とに……。
僕は偶然にこの歌の正体を見破って、ひそかに小躍りした。
「C-HC、B-BB、As-FisAs、B-」
何だ、''もしもし亀よ''じゃないか。
今は白髪を加える此の親爺さんに、僕は
此の時以来妙な親しみを感じながら、
今日も口笛を聞く。
「C-HC、B-BB、As-AsAs、B-」
(注•アルファベットは音名。CをCis、HをBとするとはっきりする。)
最初のコメントを投稿しよう!