岩に立つ女

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岩に立つ女

岩の上に女が立って (はて)しない海を見ている。 海は金色と、黒い波のかげを織り交ぜ、 小刻みに沖まで続いている。 時々、弱い潮風が、女の髪を微かに動かすが、 女は、身じろぎもしない。 今、まさに落ち行く海の陽は、入り江の山や、木や、 女の半身を(くれない)黄金(こがね)いろに染め、 半身を黒いかげに塗り分けている。 辺りは(せき)として、 鳥も、木も、波も声がない。 静止しているとも見える落日の、 (くれない)の光を浴びた 岩の上の女は、 永遠に動かぬかの如く、身じろぎも しない。
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