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峰路たどりて
里遠く。葉繁き森と
豊かなる畠のさかいの
土いきれ強き山路を
たどり来れば、甘き香りに、
桑の木の枝にしがみて
口と手を 紅に染めし
子の頃を笑まし想い出ず。
緑透く光たゞよう
木々くらき森の小路を
よぎり来て、原に寝ね伏し
草の葉の頬にふるれば、
よもぎ剪り翔しきそいて
あらそひし友の顔など、
ながれ来る白き雲にも似て……。
夕暮らき峰路たどりて
帰り行くは街の子らか、
過ぎ越しの吾れらが面影。
両の手を口の辺にもちて
叫ぶ子は 吾れか、彼かーー。
峰路辺の森の切れ間に
夕焼けのいろの艶かに……。
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