春の分教場

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春の分教場

春の日の分教場に  オルガンを弾く乙女あり。 子等(こら)は帰りて、   ()(うら)らに 緑の木々囲む運動場に  静かに満つ。 窓際(まどぎわ)()るる青柳(あおやぎ)山脈(やまなみ)につづる色あい、 (べに)は桜、白は辛夷(こぶし)。 匂えるは花の薫り。 こぶし(かつ)ぎて帰る若者、 校舎の前の井戸に立ち寄り 水を含みて、今、(しば)(いこ)へり。 見わたせる廊下も、(へや)も、  静まりて、(なお)暗く。 涼しげなる荒き造りの、 春の日の分教場に  オルガンの調べながれり。
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