雪は冷たく、そして静かに見守る

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──恥ずかしい私は君の顔を見れず、代わりに雪の世界を見つめて逃げてしまう。 予定時刻は過ぎているが、まだバスは来ていない。きっと今日も遅れるのだろう。私はベンチに深く座り直す。 車が残していった道路の轍は今日も色濃くアスファルトの黒色を強調させていた。 そして私はその轍を今の私達と重ねてしまう──。 黒い轍はどこまでも2本並んで続いていて、お互いが寄り添っているように思えたからだった。 (“今の”私達にそっくりだ) マフラーで繋がれた私達のように離れることもなく、そして恋の花が咲いたばかりの初々しさで近づき過ぎることもない。 だがこれから先、ずっと平行な道路の轍とは違い、きっと私達の心の轍はお互い近づいていく。 私は君を見つめ直すと、君は優しく私を見つめ返してくれた。 少しずつでいい──。 少しずつでもこの距離を縮めていければ......。 いつの日か、短いマフラーでも私達を繋いでくれる日を夢見ながら、私は身勝手に神様に願うのだった。 あぁ、どうか君の乗るバスが......もう少しだけ遅れて来てくれますように......。 我儘でごめんなさい。欲張りでごめんなさい......。 もう少しだけ、恋人の温かさを感じていたいから──。
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