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「......そうだね」
そう答えるが、身長の低い私にはそうは思えなかった。
確かに低い天井ではあったが気になるほどではなく、身長の高い君の見える世界を私が知れないことに少しだけ、ほんの少しだけ辛いような悲しいような嫌なようなツキリとした違和感が胸を刺した。
──小学校の頃は身長も同じくらいだったが、気づけば追い越され私の頭1つ分高くなっていた。いつしか私は目を合わせる為に上を見ることが多くなり、上から見下ろしてくる君の姿はたくましく、だけれども優しく......私は自分の視界と君が見る視界が違うことが寂しく思いながらも『仕方がない』と、この気持ちを曖昧にするのだった。
「寒くなってきたね......」
空は暗くなり始めている。薄暗い世界に少し寂しさを感じながら私はそう言うと、君は私に視線を移した。
「はい、マフラー。俺の長いから一緒に使えるよ」
そう言って私の首にマフラーを巻いていく。
一周、そしてもう一周。
「あ、ありがと......」
暖かい......。カイロやストーブとは違う、人のぬくもりの......心に満たされる暖かさ。そして、
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