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(小学校から......変わらない香りだ......)
高校生になった今でもあの時と同じ、私が夢中になっている人の......香りだった。
「そんなに顔埋められると......なんかはずいんだけど......」
マフラーの香りに浸ろうと無意識に顔を近づけていたのが見つかってしまう。私は恥ずかしさでとっさに顔を離して謝った。
「──いや、いいけど......嫌でしょ? 男のマフラーとか......」
しっかりとした体に似合わない不安そうな声。
「そんなことない......ありがと。嬉しい──」
私はそう言いながら、続けて今まで想い続けた言葉を言おうとする。
だが喉から先にその言葉は出ていかず、結局言い出せない苦しさと情けなさで顔を下に向けてしまう。
「そっか......」
──小さい待合室は気まずい空気で満たされる。
(またやってしまった......いつもこうなって......)
私は少し視線を遠くに向けて道路を見つめてしまう。
──車が時々通るのだろう。真っ白に雪が積もった道路には車が走った跡が残っていた。
車が通った2本の轍は決して交わることもなく蛇行しながら、これが役目だと言うように道路に残している。
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