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駅前通りの小さなカフェ。
私の好きなオレンジ色の照明が心地よい。
寒いところから暖かい店内に入ったせいか、顔も耳も火照っている。
テーブルの向かいに同じく耳を赤くした同僚の横川くんがコーヒーを飲んでいる。
いや、‘機械人間さん’がコーヒーを飲んでいる。
いや、同僚の横川くんが…。
何回ひっくり返して考えても同一人物なことには変わらない。
私は1年前から小説サイトの《今日から小説家》で‘月夜行’の名前で物語を書き始めた。
そして同僚の横川くんも同じサイトを愛用してることがこの前の昼休みにわかった。
それも月夜行のファンだとも言ってくれていた。
何度も言うが私は同じ小説サイトにいる機械人間さんに恋をしている。
作品を読んでその感性に触れ、エッセイを読んで心の中に触れて…夢中になった。
エッセイから推測すると30代前後のサラリーマンのようだが本当のところはわからない。
それでも私は恋に落ちた。
会ってみたいと思っていた。
直接お話ししてもっとあなたの事を教えてほしいと。
そして今夜、機械人間さんに会えるかもしれないチャンスがやってきた。
同じコミュニティに所属する桜野さんの出版記念&交流パーティー。
その自己紹介で『機械人間の名前で執筆してます』と言ったのは澄ました顔の横川くんだった。
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