24人が本棚に入れています
本棚に追加
3
そりゃ戸惑う…。
だってさ。
こんな偶然ってある?
星の数ほどのサイト利用者さんの中で、たまたま見つけて読んで恋い焦がれた人が会社の同僚だったとか。
さらに会いたいと思ってるって本人に語ってしまってたとか。
そんな人から逆に付き合って欲しいって言われるとか。
私の人生で一番の大事件よぉぉ…。
自己紹介を聞いた時は横川くんと機械人間さんが全然結びつかなかった。
でも今、向かいにいる横川くんは確かに機械人間さんっぽい。
表情や声色、醸し出す雰囲気は文面から受けるものと同じだとわかってきた。
横川くんの方を知らなかっただけだったんだ。
それに機械人間だと名乗る前の横川くんの後ろ姿にもときめいたりしちゃってた。
桜野さんと親しげに話す笑顔にモヤモヤもした。
私も月夜行のファンだと言われて意識しはじめてたんだよね。
なので小説サイトの話をする前から見てくれてた横川くんより動機は不純。
それでも飛び込んでもいいのかな。
頬杖をつきながら私の答えを気長に待ってくれてるこの人に。
自分でも嫌になるくらい、うだうだと心の中で考えてしまう癖がある。
…今もね。
そんな私をこんなに優しい眼差しで待ってもらえるなんて。
『あのね』
やっと口を開くことができた私に『うん』と言って頬杖を正し、微笑む。
『横川くんに飛び込みたい気持ちは100%まできたんだけどそれにはその前に言わなきゃいけないことがあってそれを言う心を決めるから返事は1日待ってくれる?』
息継ぎしないで早口で言ってしまった。
そう、付き合うからには月夜行であることを隠したままでいることはできない気がした。
横川くんも名乗ってくれたから。
でも名乗った後に唯一の趣味である文章が今までのように書けなくなることも怖かった。
さらには横川くんに、機械人間さんに、私なんかが月夜行なのかと幻滅されることも。
最初のコメントを投稿しよう!